妻のタイプが著者と同じなら良書。違うと噛み合わない
新婚や、まだ温度差が浅い夫婦には良い内容だと思う。雑談の重ね方、共感の置き方、感謝を言葉にする習慣——このあたりは丁寧で、関係を「これから作っていく」段階の人には実用的に効くはず。地雷ワードの言い換え一覧や質問集100も、手元に置いて使う分には親切な作りだと感じた。
ただ、すでに結婚が長くて、修復可能なラインを超えている(あるいは超えそうな)関係——あるいは、夫はやり直したくても妻にもうその気がない関係には、正直「はぁ?」となる場面が多い。
理由ははっきりしていて、この記事は終始「夫が正しく動けば、妻は必ず良い反応を返す」という単方向のモデルで組まれている。妻はもともと善良で、夫の関わり方のせいで冷えただけ——という前提が土台にある。だから「努力を続ければ必ずうまくいく」と言い切れる。
でも現実の妻にはいろんなタイプがいる。支配的な人、感情の振り幅が大きい人、こちらが何を入力しても良い反応が返ってこない人。そもそも妻の側が関係を続ける意志をなくしている場合、夫がどれだけ正しく動いても、受け取る側に相手が立っていなければ空振りに終わる。
さらに、支配的だったり感情的に不安定な相手に「謝れ」「プライドを捨てろ」「好きにさせてはいけない」をそのまま実践すると、主導権を全部渡して削られる側に回るだけになる。この本は、加害が妻側にあるケースも、妻がもう関係を望んでいないケースも、一切想定していない。だから万人向けではなく、著者の奥さんと同じタイプの妻を持っている人にとっての取扱説明書、と読むのが正確だと思う。買う前に「自分の妻はこの型か?」を一度考えるのをおすすめする。
それと、この方法はかなり疲れる。妻の感情は全部受け止め、自分の負の感情はノートに書いて捨てろ(=外に出すな)という設計なので、続ければ夫側が削れていくのは当然で、それを「複利」と呼んで美徳にしている。合う人にはハマるが、合わない人には消耗戦になる。
次に、購入者特典について。
本文の末尾にキーワードがあり、希望者がLINEに登録してそれを送ると、性行為の手順を具体的に解説した別文書が渡される。受け取りは任意で、いらなければ申請しなければいい。商品ページや本文では「露骨な性的ノウハウを求める方には向いていません」と書かれているが、実態としては、その露骨な部分を特典に分けてLINEで配っている構造になっている。買う前にこの点は知っておいたほうがいい。
特典の中身そのものの質は、正直に言えば、この種のものとしてはまともな部類だと思う。AV的な演出を真似るな、潮吹きや短時間で達するのは演技だ、と明確に否定していて、誤った知識を煽る粗悪な内容ではない。挿入前に確認を取る、相手が嫌がればやめる、体調を毎回聞く、と同意と相手への配慮を繰り返し挟んでいる点も、このジャンルでは抑制が効いている。著者自身の加齢やEDの経験を開示している部分も、本文の自己開示と一貫していて、読者の心理的なハードルを下げる作りになっている。
ただ、この特典は夫婦間にセックスが成立する(または再開できる)関係があることが大前提になっている。すでに身体的な接触自体を妻が拒んでいる関係では、使いどころがない。会話術で心を戻し、そこから身体の関係につなげる——という流れも、結局は妻側にその意志が残っていることが前提で、本文と特典は「妻が応じる」という同じ土台を共有している。
想定読者——子どもがいて、いまさら別れられない、それでも関係を立て直したい既婚男性で、妻の型が著者と近く、会話もセックスも成立する(あるいは再開できる)関係にある人——に向けては、本文も特典も誠実で具体的な内容だと思う。一方で、関係がこじれ切っている人、妻が関係を立て直す気のない人、すでに身体の接触を拒まれている人、妻の型が著者と違う人には、期待した薬にはならない。
想定読者にハマれば4、外れると2